●旅館ひがしや●
宮島は鹿の島。
船に揺られて宮島上陸。 降りて真っ先に目にしたのは、野良鹿たちです。 「宮島では鹿は神の使いとして大切にされています」と言われてますが、神の使いは港のゴミ箱に顔をつっこんでいました。ところで、鹿って何を食べるんですか? 木の皮とか、芽とか、とにかく植物でしょう。まちがってもローソンの海苔弁当ではないと思います。しかし、動物とは環境に応じてかくも進化するものか。 本当はその、ゴミ箱漁り鹿の写真を撮りたかったのですが、この時、時間は6時半。すでに夕暮れ、観光客達はとっくに宿で一杯やっている時間で、こんな時間に港にいるのは地元の通勤客ばかりです。その真ん中でカメラ構える勇気は江口にはありません。フィルムカメラの方では撮ったけど。 本日のお宿は『旅館ひがしや』。M1くんがネットで調べて、手頃な値段の宿ということでした。どこにあるか等の情報は全くありません。二人がどんどん進んでいく、その後ろを付いて歩く。ひがしやは、土産物屋の並ぶ中にあるようです。土産物屋の全てはすでにシャッターが降りていました。健全な街です。
5分ほど歩いて到着。 おお、古い旅館だ。昔ながらの旅館という感じだ。昭和臭がぷんぷんする。自販機のジュースは140円だ。ロビーには100円で10分遊べるファミコンがあった。ちゃんと仲居がいて、荷物を持って案内してくれる旅館だ。 はっきりいいましょう。期待していませんでした。だって、安い旅館だって聞かされていたから、合宿所のようなものでもいいや、と覚悟していたんですよ。
それがちゃんと、
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ウェルカムもみじ饅頭はある、 |
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ちゃんとした料理が出る(ただし、部屋に運ばれるのではなく、隣の部屋へ移動)、 |
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窓から大鳥居を含む夜景が見える、 | タオル・浴衣・歯ブラシすべてのお泊まりセットは完備、お風呂は大浴場だがシャンプー・ボディーソープ備え付け。なんで江口もこんなに感動しているのかわからないが(よっぽど期待していなかったんだろうな)、とにかくマイナスのないごく普通の旅館だったことが嬉しくて仕方ありません。まあ、古さは一番でかいマイナスかも知れないが、江口はこの昭和臭が大好きなので問題ない。あ、あとテレビの有料チャンネルがなかった。怒ってた(誰が?)。 ちなみに部屋代はおひとり¥10,800。高いのか安いのかは、旅行慣れしていない江口にはいまひとつ分からないが。この時泊まったのは、和室4人部屋でした。 で、おまえらは3人もいて、誰一人江口がレディだってことに気付かなかったのか。
荷物をおろしてすぐに食事。のんびりゆっくり頂いて部屋に戻る。江口はすぐにお風呂に行ったが、M3くんは夜の散歩を楽しみに行ったらしい。部屋の窓からのりだせば、真下は遊歩道。他にも人と鹿が夜だというのにわらわら歩いています。
そう、夜なのに、人が出歩いているんですよ。しかも女性だけとか、あまつさえ旅館浴衣姿で! そこをふまえて、もう一度夜の風景を眺めてみましょう。 酒の匂いがしない。 飲み屋とか、カラオケ屋とか、酔っぱらいとか若い連中とかがいない。 江口のいる町の方で夜に女の子が一人で海になんて行ってご覧なさい、そこで襲われても文句は言えませんよ。それがここではいっぱい歩いている(いっぱい歩いている時点で、それは一人ではないのだが)。ともあれ、ここは雰囲気のいい観光地です。クリーンな島です。鹿のフンだらけだけど。 まあ、そりゃそうだろうな。船がないと余所者は来られないんだ、神社目当てでもないのに、わざわざそんな面倒くさい経路を使ってヤンチャ達は来ないだろう。 しかし、この神社にも祭りはあるだろう。そうなると人の構成はどうなるのだ。江口の近所の神社では、祭りになると当然ヤンチャ達が走り回る。ここもそうなのか。汚されていくのか。一番近い祭りは明日のBOOM。明日には江口はもういない。見られなくて残念だ。
江口はひとりでお風呂に行きます。誰もいません。貸し切りです。泳ぎます(本当に泳いだ)。部屋に戻ると、ヤロウ達はおしゃべりを楽しむでもなく、テレビをつけるでもなく、持ち込んだパソコンで仕事していた。おまえらは休日の過ごし方を知らないジャパニーズビジネスマンか。やっぱりみんな仲が悪いのか。 なので、皆の結束を固めるために提案。これから風呂に入る3人に命令。 3人で競うように風呂に入れ。 1番最初のヤツは「俺、いちばーん」と宣言し、2番のヤツは「ずるいぞー」と後を追いかけ、3番目のヤツはタオルで前を隠しながらおずおずと入り、そして先の2人が3番目のヤツを押さえつけてタオルをはぎ取れ、と。これが合宿風呂の醍醐味だ。やってこい。
今頃3人は仲良く同じ風呂に入っているのだろうか、とわくわくしながら、江口はひとり寂しく浴衣に着替え、見慣れない広島県のテレビ番組を見ながらぐだぐだして待つ。しばらくして戻ってきたら、「若いねーちゃんがいたよ! 浴衣だったよ! 服で風呂から出てきた俺らはチキンみたいだったよ!」と喜びながら戻ってきていた。で、合宿風呂はしてきたのか?
では。
夜ですし。
あとは宴会ですよねーーー。
ちなみに、客室備え付けビールは1本¥700.お座敷価格。 なので持ち込み。 もし「お客様、お持ち込みは困ります」と言われたらどうしましょう。その時はこう答えて下さい。
「じゃあ独歩を出せ!」
宮下酒造製・岡山県地ビール『独歩』。 |
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何でか知らんが、岡山の二人は旅行の度にこのビールを持ち出す。お気に入りだろうか、もしかして。 あとはひたすら飲む。と言っても、飲んだのは江口だけの気がする。あとの連中は、またパソコン持ち出していじっていた。だからおまえら、何しに来た。 酒の量が足りなくて悔しくなって、大浴場の横の自販機に行ったら、23時を回っていたからかどうか知らないが、もう販売中止になっていた。しょぼん。 誰も相手してくれないので、また寂しくテレビを見ながら、まるで普段の自宅の休日のようにぐだぐだ過ごす。ヤロウ3人集まって、エロい話の一つもするでなく、黙々とキーボードを叩く。唯一反応したのが、『チューボーですよ!』。ゲスト・眞鍋かをりがブラウン管の向こうでメガネをかけたら総立ちになって盛り上がっていた。おまえら、実はダメ人間だろう。
と、パソコンをいじっていたM1くんが突然悶え始めた。何があった、変なファイルでも見つけたのか、と画面を覗くと、そこには水野晴郎のホームページが。 『シベリア超特急5』試写会イベントで、ファンと交流を深めている晴郎の画像があり、そこにM1くんがイイ顔して映っていた。 行ってたのか。どうりで車の後部座席に、シベ超関連のものが大量にあると思った。ネタ仕込んでたワケじゃないんだ、休日の名残だったんだ。いや、M1くんのことだから、今日を見越しての長期的な仕込みだったのかもしれない。彼ならやりかねない。
で、気が付いたら江口はもう寝てた。掛け布団が暑くて文句行ってたのは覚えている。
そして朝。7時半起床。ぐっすり寝ているはずなのだが眠い。意識は起きたって血圧が上がるわけじゃなし。こんな時間に人間は活動するものじゃありません。 まあ、わしらもいい大人なので、寝過ごすことはなく。予定通り8時には朝食です。
何の変哲もない旅館の朝ゴハン。 |
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でも、焙烙焼きと見せかけて実は‥‥。
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その後、M2くんは朝風呂へとおもむき、江口はM3くんとロビーでモーニングコーヒーを楽しみました。ロビーでいると、泊まり客がわらわらチェックアウトで出てきます。意外とたくさん泊まってました。で、あんまりたくさん人が来るものだから、いよいよ¥100ファミコンやろうかと思ったけど出来ませんでした。このことだけは、旅行から帰った今も悔やまれます。
●厳島神社●
鹿と戯れるすてきうさぎーズ。
9時半。旅館ではチェックアウトした後も荷物を預かってくれます。そこで身軽になっていざ厳島神社へ。 昨日はシャッターが全部降りていた土産物屋通りも、今日は大にぎわいです。あちこちでもみじ饅頭としゃもじを売っています。しかし、旅館を出て真っ先に飛びついたのは、広島ご当地ピンズのガチャガチャ。昨日から(M1くんだけが)自棄になって回している。しゃもじピンズが欲しいらしい。ガチャガチャを見つけるたびに飛びついている。おかげでダブったもみじ饅頭ピンズが貰えた。ラッキー。
海岸側に出ると、ちょうど良いタイミングで引き潮です。大鳥居が剥き出しです。 行くしかないでしょう。
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もちろん江口はいきますぜ。足下がサンダルだとか、完全に水が引いているワケじゃないよとか、そんなことは気にしちゃイケナイ。大鳥居の根本まで行けるというなら、行きましょうぜ今すぐに。 というわけで降りていきます。 降りていかない観光客も、そりゃいるわけで。 海に降りたら、陸上の人たちから自分たちの動きが丸見えになるわけで。まあ、そりゃ自分だけが見られているなんてそんなウヌボレをぬかすつもりはありませんが、ともかく、この開けた空間では、何をやっても目立ちそうな気がしてね。 そういうことを分かっているんだから、引き潮のギリギリ海岸線に立って真人間をやめてみたり、ヤドカリを振り回してみたり、「潮干狩り禁止」の立て看板にカメラを向けたりするのはやめた方がいいんじゃないかなあと思います。何度もいいますが、イイ歳の集団です。 | ちなみに、この晴天の海の中に降りるなどと考えてはいなかったので、江口達はあまりにも無防備でした。 この夜から、うなじがヒリヒリ痛くて眠れなくなりました。すごく焼けてます。こんがり小麦色。
では地上に戻り、地に足をつけて本殿に行きましょう。 拝観料は大人ひとり¥300.朱色の柱に囲まれた広い回廊を歩きます。
でもまあ。 痛々しいな、台風禍。 見渡す限り、どこも修復中。朱色を台無しにする水色のビニールシート。いやいや、神社に罪はないし、ビニールシートにも罪はない。誰も悪くないので、ここは気にしないで進みましょう。 でもまあ。 仕方ないことなのかも知れないけれど。 見渡す限り、『KEEP OUT』の張り紙が。仕方ないよ、入っちゃ行けないところもある、修復作業をしているところもあるし、普通に関係者以外立ち入り禁止の所もある。仕方ないことなんだろうが、3歩歩いたら見えるので気になって気になって。
途中、浅葱色袴のお兄ちゃん達(巫女さんの男版。何て言うんですか。禰宜? 出仕?)を見つけたのでカメラに収めようと構えるが、なかなかタイミングが合わず。しかたないので巫女さんに被写体を切り替えたが、どうしても奴らは動く。動くものを撮るのは難しいなあ。 ふと見ると、M2くんは静止している巫女さんに近づいてしゃもじ買ってた。うまくやりやがる。 買い物を待っている間、おみくじを引く。大吉。去年からこっち、くじ運が良い。でも旅立は控えろと書かれてた。旅先なのに。
いーやもう、まったく不勉強で申し訳ないが、ここで神社の由来とかなんとかに全く興味を持っていない江口です。ここでひとつ頭よさそうな講釈を垂れてみたいものですが、それは詳しい人に聞いて下さい。江口は建造物としての神社しか見ていません。
長い廊下を渡り、出口です。 途中の売店でちょっと休憩して、次は宝物館に入りましょう。
箸休め。
宝物館も同じく¥300、スリッパに履き替えて中を見学です。 やはりこういう所はカラーリングを合わせるのか(笑)、朱色の外観です。しかし、作り自体は新しい感じが。どっしりした背の高い建物です。中は薄暗く、狭い。どでかいショーケースが数基並んでいて、書物やら美術品やら武具馬具武具馬具三武具馬具。ポストカード貰った。入館チケットにも載ってる金銀荘雲竜文銅製経箱(国宝)。現物も見た。まあここでも江口は生来の興味なさ具合を発揮し、単純に美術品のステキさを堪能してました。なので書物系の資料はどうでもいい。 あと、展示品よりも建物に興味を持ってみたり。備品なのか展示品なのかわからない帽子掛けや、椅子や、レトロな扉の方が気になっていた。そんな江口は挙動不審だったのか、学芸員らしいおっちゃんに近づいてこられた。とりあえず聞き出した情報では、この建物は築70年。天井は板を張っているフリをしているが、実は全部コンクリ。ショーケースのガラスはドイツ製で、ちょっと波打ってるのが特徴。70年前の最先端防犯技術があちらこちらで、明かり取り窓の防犯シャッターを下ろして見せてくれた。あと、窓の向こうにタヌキが寝そべっていたのを見つけて教えてくれた。もしかしておっちゃん、ヒマだったのだろうか。
そんなこんなしていると、急に館内が騒がしく。鍵束を持った責任者神官らしい人と、違う学芸員の人と、あと若い兄ちゃんが。ジーンズにノースリーブでバンダナ巻いて、俺は1年の10ヶ月はこんな格好で移動は自転車オンリーだぜ夏にはこの愛機で日本一周するのさーコンビニレジを打たせたら右に出るものはいないぜーみたいな兄ちゃんが。ああ、たぶんこの兄ちゃんがマニアで、なんかしっかり聞きたいことがあって人を呼んだのかなあと思っていたら、刀剣の展示ケースが開けられた。あのドイツ製ガラスのショーケースが、最先端セキュリティ(鍵穴3つ)が施されたショーケースが開けられてるよ。なに? そんな簡単に見せて貰えるものなの? こんな得体の知れない兄ちゃんでも? と思ってドギマギしながら経過を見ていたら。どうも兄ちゃん、ただの観光客ではないようだ。というか、思いっきり関係者臭。なので我々の結論では、あの兄ちゃんは研ぎ師だということになった。だとすれば江口はさっきから失礼なことを言ってますな、申し訳ない。
宝物館を出て、まだ向こうに建物があるので移動する。
大願寺でした。 それにしても日本という国は、神社と寺が一緒くただ。江口はそんな日本が大好きだ。
ともあれ、大願寺。弁財天様が祀られております。日本三弁財天の一つだそうです。『三寺』じゃなくて『三弁財天』。寺じゃなくて本尊の方が分かれるんだね。こんなアバウトさも大好き。 線香、蝋燭それぞれ各30円。みんなが線香を買う中、江口は蝋燭を買い、線香派共へ種火を提供してやる。燭台の一番上の真ん中に刺して喜ぶ。 少し離れたところに、なで仏が。この頭はみんなに撫でられまわったので、たいそうツルツルです。ぜひ触ることをお勧めします。御利益はなんだったか忘れた。
しかし、意外なことに我々は神社よりもここに長居をしております。巫女は触れないけど仏像は触れるからかな?
さあ、いいかげん次に移りましょう。まだ午前中ですよ。
「撫でているのは人の方なのだから、『なで仏』じゃなくて『なでられ仏』の方が正しい」
とM1くんは言った。どっちでもいい。
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