●2005年8月23日の旅●
今日という日のために用意したレトロな水筒。 こないだ、職場の休憩室を掃除して発掘し、ガメた。
おはようございます、江口梨奈です。
みなさん、江口が遍路巡礼のことをすっかり忘れているとお思いだったのではないでしょうか。 覚えてますよ。
というわけで、今日はいよいよ、2回目の巡礼です。思い起こせば前回に予定したときは、渇水の香川県に大雨が降り浸水し、それどころじゃねーよという騒ぎでした。ちなみに今回も、ついに早明浦ダムの貯水率が0%になってどうしようという直後の雨降りウィークデーでの計画でした。また雨で予定が潰れるのか、それはそれでオイシイなあ。 しかし江口は神に捨てられ御仏に拾われる。何のこっちゃ。ともあれ、そんなオイシイ事態にはならず、巡礼にさあいらっしゃいと手招きされてしまいました。天気はやや曇りの、しかし良い天気。さあ、小鳥さんたちおはよう。江口はお弁当を作るわよー。 皆様、お覚えでしょうか。遍路巡りに行く我々の、鉄の掟を。 1.前日に夜更かしをしない。2.前日に仕事をため込まない。3.前日に酒を飲まない。 4時就寝の7時起床はキツいなあ。しかも今日は江口が100%ドライバーだしなあ。てゆうか、なんで江口は前日にさっさと寝ないかなあ。
ともあれ、毎度の光景をここで繰り広げつつ、9時、今日の生誕者を迎えに行きます。なぜ生誕者か。今日の旅が、このツレの誕生日おめでとう企画として持ち上がったからだ。それだけ。で、相も変わらず、迎えに行ったもののまだ寝起きで準備のじゅの字も出来てなかった。 なのでしばらく待つ。今から朝ゴハンです。シリアルに牛乳かけて食べようとしたら、これがえらいこと不味いそうだ。いったいどれほどかと、江口もお相伴にあずかってみる。大豆ペプチドか何か知らんが、栄養のためにすべてを犠牲にした味だった。普段、食事を残すことを悪とする生誕者が残すほどに。 朝食で栄養を補給できなかった生誕者、その後サプリメント3種類と愛飲のキョーレオピンを囓りまくる。未来人の食事風景だな。
なんか関係ないことで文面を費やしているが。 さっさと出発しましょう。 前回の反省をふまえ、ナビ役の生誕者に今日の予定を全て伝えます。予定。観音寺市の県道5号線から32号線に乗り換え池田方面に向かい、国道192号を東に向かって走ります。お弁当ポイントは途中、11番札所近くの上桜森林公園。本日は17番札所まで行きましょう。 スムーズなスタート。順調に、車は進みます。
1時間半ほど走り、最初の目的地、おべんとポイントである上桜森林公園を目指します。192号の途中で、県道43号と交差するので、そこで右折すれば大丈夫です。場所は藤井寺のすぐそば、たぶん同じ山なんじゃないでしょうか。
見つかりません。
ナビ曰く、「吉野川遊園地の観覧車を通り過ぎたらゆきすぎ」。ゆきすぎました。ゆきすぎて、右折・藤井寺の標識を見つけてしまいました。どうしましょう。このまま藤井寺まで行って、そこでちょいとゴハンでもしましょうか。いやいや、せっかくの計画なんだから当初の目的地でいいじゃないか。でもちょっと、川島城にココロ動いたりもしたけれど。
とにかく引き返してみます。逆送の方が分かりやすかったです。上桜温泉の看板があるので、それを目印に曲がる。と、すぐに公園入口の矢印があります。そこを左折。ああ、公園っぽい敷地に。
で、車はどこを走ればいいんでしょうか。
いやー、森林公園にしては、まっぷるにも案内が載ってないなあって思っていたら。ものすごく荒れた公園でした。平日だからというのもあるが、誰もいない。車道なのか遊歩道なのか分からないところを走り、しまいには遊歩道を走らせ(今思えばよくあんな場所を通れたものだ。江口の運転技術もなかなかだ)、駐車場もわからないので結局グラウンドのそばに車を停めました。いちおう、グラウンドは整備のあとがある。使われていることは使われてるんだな。 長居は無用だ、さっさとゴハン食べて、本来の目的地へ急ごう。
池の畔。 渇水で水面はかなり低い。
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グラウンドのそばに、池があり、ほとりに沿って橋がある。どんづまりにベンチがあったので、そこをおべんとポイントとしました。今日の天気は曇り。時々日光が顔を出してたいへんなことに。
今日のおべんとはサンドウィッチ。 前日が夜勤のため準備が出来ず、だからといって朝にこれ以上早起きは出来ない。というわけで逃げ。 かわゆいバスケットに入れているのがせめてもの抵抗。 ちなみに、パンの耳がついたままなのは、それで嵩増しして他のおかずがなくても大丈夫なようにだ。 パン耳はかなり腹が膨れます。 |
卵と、トマト+生ハム+チーズ。 やっぱり緑色がない。
| さらば上桜公園。結局『うえさくら』なのか『かみさくら』なのか『かみおう』なのかそれ以外なのか解決しないまま、さらば上桜公園。
再び、192号です。週刊遍路によれば、この少し先の交差点で右折すれば藤井寺。しかしその道は細く儚い。 我々は、国土交通省を信じよう。 先ほどの道のことは忘れ、更に進みます。ゴハン前に見つけた標識のところまで戻ります。右折します。進みます。ちょっと住宅地の細いところを進みますが、大丈夫、個人の家の塀に、『藤井寺→』と貼っています。しかしこういうのもやっぱり、保存会かなんかが頼んで付けてもらってるのかなあ。 無事到着しました。
●第十一番札所 金剛山 藤井寺(こんごうざん ふじいでら)●
一見は、平和そのもの。
前回のことを思い出しましょう。それまで順調に進んでいた遍路道が、最後の最後(10番・切幡寺の石段333段)で難所だったことを。 そう、呑気な遍路は9番まで。あとは苦行が続くのです。 それを忘れていたでしょう我々は。前回から、苦行が始まっていたのです。 一見平和な、藤井寺。道のりも易しく、まだ町中と言っていい場所で。我々は難関にぶつかりました。
ここから駐車料金が有料になるんですぞ。
広い駐車スペース、誰もいません。静かなもんです。 道向かいの売店のおっちゃんが、じっとこちらを見ています。我々が下りてくるのを待っています。 普通車¥200。ああフトコロが痛い。難関難関。 悔しいので長居することにしました。
駐車場から仁王門まで、用水路が道沿いにあります。用水路ではありますが、なかなかの清流です。あめんぼとかいます。8月ですが涼しく感じます。 石段を登って、仁王門をくぐる。中はこじんまりした山寺。納経所も年季の入ったもので、和みます。 しかし、そんな和み空間ですが、背後から刺すような視線に常に襲われている感じがします。 本堂の横には、こんなものがあるのです。
焼山寺への入り口。 短冊がいくつもぶら下がってる。 |
↓ 拡大 |
13qだそうです‥‥。 |
藤井寺の至る所で、次の札所までがどんなに遠いかをアピールしてくれます。脅しに近いかも知れません。そんなに恐ろしいのか、最初の遍路ころがしは。 納経所の上部には略地図があるが、そこでしらっと「車で1時間半、歩いて6時間」とかぬかしてやがる。納経帳に書いてもらうと、墨移りを防ぐのに当て紙をしてくれる、その紙が遍路道地図だったが、簡単そうなルート地図に見えるそれは焼山寺だけ説明を放棄したかのようだ。
ともあれ、覚悟を決めて行きましょう。
●第十二番札所 摩廬山 焼山寺(まろざん しょうざんじ)●
どっちを選ぶ?
悪いことは言わん、広い道を行け。 これまで確認した観光ガイド、遍路マップ、そして直前の藤井寺。全ての情報が、我々を脅しにかかります。そしてとどめを刺したのが、この標識。 『県道31号経由(道狭い) 国道192号経由(道広い)』。 この矢印の太さはなんだろうな。 どちらにしよう、としばし協議。
「せっかくここまできて、その山道を通らないのはウソだろうよ!」
決定。我々は狭い道を選びました。 運転には若干の自信があるのですよ。なにせ毎年夏に江口は避暑地(高知県四万十市)にこの車で行っているのです。そこで鍛えられた、山道運転テクニック。さっきだって公園の遊歩道走ったじゃん。そして江口の車は軽自動車で車幅も広くない、小回りぐるぐる。週刊遍路でも、車の通り道として紹介されているこのルート、通れなくはないだろう。ゴー。
大後悔。
狭いのなんの。車1台がやっとの道なのに、ガードレールがないの。もちろんその横は谷。ケータイ電波も入るわけがなく、落ちたら4日は発見されないだろう(四万十市の避暑地では3日は発見されないだろう、と言ってた)。時速20キロで走る江口。唯一の救いは、この道はただ焼山寺にだけ続いており、そこを目的としない人でなければ通ることもなく、事実上一方通行だということか。その危険地帯で対向車と遭遇することはなかった。いや、もちろんその先には寺以外の集落もあるのだから、江口は単に運がいいだけだったのかもしれない。それに遍路観光シーズンともなるともっと交通量も増えるのか。
緊張しながらも山を越え、少し道が広くなると、民家が見えてきます。おお、なんとか難所を抜けたか。 『梅の里』という綺麗な名前の集落です。 しばらく進むと、右折・焼山寺の標識が。従って曲がる。
?
あってるんでしょうか、この道で。 急に広い道になります。その脇に、手書きで歩き遍路の絵と矢印の描かれた板きれ看板があり、それはとても車が通れそうにない道を指しています。 我々はどの道を選んで進むべきでしょうか? この広い道でいいのか、それともこの田んぼに耕耘機を入れるための斜面みたいな道を進めというのでしょうか? 「ちょっと考えよう」と、車を止める我々。 問題の交差点は、県道31号と20号と分かれる標識が立っている。手元にある地図は週刊遍路のみで、20号がどの道を指しているのかわからず、現在地が特定できず。標識を信じてここを右折して広い道を進むのか、しばし進んでもう少し様子を見るのか。
あれほど標識を信じていた我々、ここで初めて標識を裏切ります。直進。20号と指している道を。
その報いです。
迷いました。モロに。
これ以降、ひとつも標識が見当たらなくなりました。我々は明らかに迷っています。しかし、現在位置はまったく分からず。 「とにかく行こう、そのうちどこかへ抜けるだろう」という江口に、生誕者は「なんであんたはそんなに前向きなんだ」と聞き返しました。普段のドライブでUターンを許さない人間の珍しい発言です。録音しとけ、録音。 結論からいいますに、週刊遍路の地図は役に立ちません。なにがダメって、途中に挟んである番外編路(八十八カ所以外の神社仏閣)を紹介している、そこを含んだルート説明しているもんだから、必要ない道を赤線で記してある。そして地図の上に直接宿屋やホテルの名前を書いているから、肝心の地図が文字で見づらい。ともかく、唯一分かることは、江口たちが現在20号線を走行しているということだけです。でも20号線とは、どこなんでしょう。 現在地を知ろうと、通り過ぎる郵便局やバス停の名前を見ていきます。しかし、地図のどこにもそんな地名は載っていません。雨も降り始めました。阿野郵便局発見。広野郵便局発見。でも地図にはありません。数少ない、名称のはっきりした建造物だというのに。
週刊遍路を、第8号に持ち替えます。13番〜15番札所の載っている方です。そこの地図を見ます。 ついに見つけました。広野郵便局の名前を。 そして同時に、江口達がものすごく焼山寺から遠ざかっていることも判明しました。みごとな逆送です。というか、大日寺までもうすぐです。
20号線が大きな道と交差する場所に出ました。一旦車を止めます。どうやらこの大きな道は橋で、川を渡るようです。川を渡った向こうはもうひとつ大きな道。地図を信じるなら、あれは21号線。意を決して右折。
真正面に見えるは『プチペンションやすらぎ』。
ようやっと現在地を把握できました。目の前にある建造物と手元の地図のランドマークが一致しました。江口達は今、21号線に乗り換えました。
体勢を立て直し、再度焼山寺を目指します。あとはもうまっすぐまっすぐ。神山高校の手前にあったサンクスでいったん休憩することにします。久しぶりに遭遇したコンビニです、おおいに利用しましょう。この先も無いから。 あとは標識に従って、細い道をどんどん進みます。途中、道が崩れていて迂回させられるなどシビアな道もあったが、なんとか大丈夫。山道ではあるが、車も十分進める道。
山を登ると、目の前に見えてきました。Pマーク。 駐車場です。 走行時間約2時間、我々は焼山寺に到着したのです。
ごめん、まだ到着してない。 駐車場に車を止めて、まだ本堂までしばらく歩きます。これ以上は車で行ってはいけません。
止められてるしな。
焼山寺。感想。 とにかくキレイ。新しい。どこもかしこもピッカピカでハイテクノロジー。 江口の中でイメージは、山の上の秘境。世捨て人達が集まって修行でもしてそうな。ぽつんと小さな庵があって、蝉時雨がしゃわしゃわ降り注いでいそうな。 ところがギッチョン。新しいのですよ、人工的なのですよ、おじゅっさん達がタイムカード押して勤務管理していそうなのですよ。 でも、そりゃそうだ。こういう不便な山の上のところから直していかないと、放っておいたら真っ先に荒れるのはココなんだ。なので最優先で直される。むしろ街中の、便利な場所にあるところほど、手をかけるのが遅いと思う。
さあ、道中が苦行なら、到着してからも苦行。 納経をしてもらいます。 一緒に駐車場代を請求されます。¥300。うう苦行。ちなみに自己申告システム。かといって、「いえ、歩いてきました」などと大嘘がつけるほど説得力のある格好を江口はしていない。ここは正直に。人間、正直が大事よ。
道中の騒動のワリに寺での感想が少なくて申し訳ない。いやさ、道中のことが長すぎるよ。 仕方ないさ、寺では10分、走ったのは2時間だからな。
予想外に時間をくってしまいました。急いで次の札所を目指しましょう。
●第十三番札所 大栗山 大日寺(おおぐりざん だいにちじ)●
新館 花はエレベーター 本館は部屋広い
先ほど通ったのと同じ道を戻ります。全く同じ道を戻ります。でもこの道を通らないと大日寺には行けません。 つまり、焼山寺へ行くときに、192号経由の広い道を通ると、大日寺を通り過ぎてから向かわなければならなくなります。かなり損した気分にはなるでしょう。しかし、道に迷って時間を大幅に損した事態と比べれば。一番いいのは、あの山道を迷わずに行く。あなたがチャレンジャーなら頑張って下さい。
13番の大日寺は、お街のど真ん中にあります。道路に面して、すぐ。場所が場所だけに周りは旅館だらけで、油断しているとその旅館達のひとつと間違いかねません。そして駐車場は道を挟んで向かいの、少し離れたところ。焼山寺を背中にしたら、手前の右。うっかりすると行き過ぎます。江口はうっかりしました。
大日寺は山門もなく、道からすぐに石段があって敷地に入れます。ちょっと交通量が多いので、道を渡るときには気をつけよう。中はこじんまりして、というか狭い、ほっとする感じ。誰かが障子の張り替えをしていたのもほほえましく。 あまり長居するわけにもいかず、納経所に向かいます。納経所は至る所に『開放厳禁』の張り紙をしています。みんな開けっ放しにするんですね。
ここで時計を見ます。夕方4時ちょっと過ぎ。 本日の目標、17番札所まで行けるでしょうか? 次のページに進みます。
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