えぐちず 2

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●2006年3月20日の旅●


太平洋と、ホイールカバー

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 長い冬に閉ざされておりました我々の未来。雪解けと共に再び道が開けました。何のことはない、ドライブにいい気候になったから出かけることにしました。2006年一発目は、室戸岬です。うわー。

 今回より、我々の旅は高知県に入ります。
 覚えていらっしゃいますか、前回、23番札所は徳島県のはしっこで終わりました。そして次の最御崎寺。場所は室戸岬の頂点です。ここで『週刊遍路』を見てみましょう。ご丁寧にこの本は、各札所間の距離と移動にかかる時間の目安を書いてくれています。

 薬王寺→最御崎寺 (徒歩)2〜3日。

 どんな距離だよ、それ。
 でもご心配なく。我々は車です。
 しかし、香川県から高知県入りするとなると、呑気に一般道など通っていられれません、高速道路を使うこととなります。なので今回は珍しく、事前に走行ルートの打ち合わせを行うことにしました。というわけで、本日の同行者の名前はナオナビ。昭文社の道路地図を渡したら、黙ってルート設定をする、とってもリーズナブルなナビゲーションシステムです。ナオナビのルート選択結果、大野原ICから高速道路に乗って、南国ICで降りる。あとは国道32号線を南下し、国道55号に乗り換えて東へ東へひたすら東へ。所要時間の予測は、高速道間は約1時間、一般道で約2時間といったところでしょうか。地図上で目測したところ、およそ120qぐらい。
 しかしナオナビから警告が。
 「高知県の道を、香川県と同じと思うなよ」。
 改めて地図を見てみよう。幹線道がこの55号しかない。室戸方面を目指したとき、使われるルートはこの道1本。混雑しているから他の道、とか、ちょっとでも近道を選んで他の道、とか考える余地は全くない。ここを通るしかない。これしか道がない。そして地図にも『交通量多い』ってしっかり書いてある。室戸に抜けるまでに、高知県の大きな市をいくつも通ることになる、そりゃ交通量もハンパじゃないだろう。

 さあ、覚悟を決めて。20日午前9時、出発です。
 嘘。家を出たの9時30分すぎ。いつものことだから、もうツッコむ気も失せてる。

 大野原ICから、高知方面へ。高知道までの乗り換えは複雑なジャンクション。徳島道とか混ざってるからな。どこの車線を走っていいのやら、ドッキンチョ。冷や汗をかきながら、なんとか高知道に乗り、およそ1時間のドライブです。とくに面白いイベントも発生せず、無事に南国ICで降りることに成功しました。

 そして到着しました南国市。

 南国だった。

 シュロが植えられた、だだっぴろい道。ミニマムなハワイのようだ。ちょっぴり宇和島市の風景に似ていなくもないが。降りるとすぐに見える耳鼻咽喉科の看板にあった電話番号のゴロ合わせに心奪われる。ハナハナミミゴー。
 空港が近いのか、すぐそこを飛行機が飛んでいた。
 至る所で尾長鶏だった。
 ガソリンはレギュラー1リットル¥131だった。
 そんなことよりなにより驚いたのが、道路の速度規制が60q/h。
 60q/hかよ。
 江口の車人生8年において、こんな表示みたことない。50q/hが最高だった。一般道では速度の上限は60q/h、その規制目一杯使うことが許された高知の一般道。そして道は広い。そりゃぁ飛ばせということでしょう。高知は思いっきり車を走らせるのが許されている!!

 至る所で白バイを見かけた。高知は白バイ率も高い。実際捕まっている人たちも見た。2ヶ所。別に許されたわけじゃなかった。

 交通量多いと脅された道を走る。途中でお腹空く。おべんとポイントはいっそのこと室戸岬でいいじゃん、などと言っていたが、まだまだ目的は遠く。正午頃に通りかかった道の駅・キラメッセ室戸で海を見ながらゴハンにする。

   本日のメニューはまたサンドウィッチ。決して手を抜いているわけではなく、リクエストがあったからだ。
 上にあるのはピーターラビットのキャンディボックス。旅のお供に。
 そして例の、タダで貰った水筒は大活躍。型は古いが便利だよ。

 キラメッセでは太陽光発電のパネルがありましたが、稼働してませんでした。

 おなかも膨れたところで再出発。気が付けば『交通量多い』と地図で示されていた場所はとっくに過ぎております。ぜんぜん多くなかった。それともあれか、高知人にとってはあの交通量はもう我慢できないくらい混んでいる扱いなのか。
 道は道なりにまっすぐですが、途中で三津方面に行く道と分かれるので、そこだけ注意。道は右を選んで下さい。まっすぐ行くと、室戸岬をショートカットすることになります。

 港沿いの道を走ります。前方はすっかり太平洋。外洋に面した港は防波堤ならぬ防波壁で覆われている要塞です。
 右は海、左は山。見上げるとそこには道があり、走る車の姿も見えます。
 ラピュタだな。あんなところ走る車なんかあるんだ。誰が走るんだ、あんなところ。
 と思っていたところ、ようやく最御崎寺へ行く案内標識が。左折せよ。

 はい、あのラピュタを登るのは我々だったんですね。

 すごい傾斜です。ちょっと進むと、もう高い位置にいます。傾斜がすごいのでカーブも恐ろしい角度です。
 その時です。突然、車の外でガラガラガラ、と妙な音が。
 振り返ると、坂を転がるホイールカバー。
 あれ? あんなの落ちてたっけ。江口、踏んだっけ?

 わしの車のじゃーーー!!!!

 慌てて回収。上の写真はその時のものです。
 回収に向かったナオナビは、そのまま景色を堪能して、なかなか戻ってきませんでした。

 

 

●第二十四番札所 室戸山 最御崎寺(むろとざん ほつみさきじ)●


よう おまいり
讃岐弁を使うなら「よぅに まいっとき」かと。

 なんだ坂こんな坂。
 ぎゅいぎゅいGに負けそうになる坂を上りながら、我々は2006年最初の札所に到着しました。駐車場はどこでしょう。わからないのでその辺に停めておきます。大丈夫。
 やはり暖かくなってきたのでしょう、明らかに観光客の遍路人があふれていました。近所ドライブの人たちかもしれない。
 駐車場から、本堂まではちょっと歩きます。幟が立っているので、縁日みたいです。まあここは太龍寺とかみたいに、完全に隔離された山寺というわけではないのだが、それにしても高所・難所になるにつれ、人工度が高くなるのはどうしてだろう。どうしてもなにも、真っ先に手を加えないと維持できないからに決まってるんだけど。余所者がそこに口を出しちゃなんねぇ。我々はありがたく、便利になった札所を便利に観光させてもらいます。そして山の上札所は、駐車料金を取られる。¥200。このお金でここは修繕されているんだ。

 入るとすぐに土俵。そして鐘石。鐘の音のように音が鳴る石だそうで、音は冥土まで届くとな。皆、気になるのだろうか、常に人が群がっていてなかなか触れず。なので先にお参りを済ませる。よう、まいる。

 賽銭を入れ、銅鑼を鳴らす。
 と、まるで自分のポケットから小銭をばらまいたかのような音が。

 

 原因はこれ。
 引き綱の下に、びっちりと5円玉。
 「じゃりじゃりじゃりじゃり」と音がします。鐘石よりすごい音です。

 おまけ。今年初の開運おみくじ(¥100)を買う江口。
 6種類ぐらいあって、それぞれ中に入ってるアイテムが違う。
 蛙か5円玉が欲しかったのだが、小槌でした。でも大吉。
 あと、今年、初詣に行ってなかったのを今思い出した。

 参拝を終え、鐘石もちゃんと鳴らしたので、思い残すことなく次を目指す。
 と、山門を見ると、なぜか仁王像が。え? 普通は外向きに立ってるじゃん。
 そう、背中合わせで、内と外、両方にいるんですね。こりゃちょっと珍しいな、と思ったが、思っただけで由来とかそんなのを気にするつもりはない。

 帰り道。駐車場に戻ると、あいテレビ(愛媛県)の取材クルーがいた。この後、津照寺でも会った。頑張ってくれ。

 

 

●よりみち 室戸岬●


展望台より。

 『ロボロボ』ばっかり更新しないで、早くこっちも更新しろと怒られました。今日は4月9日。
 無事、最御崎寺を参拝した江口、すぐに次の札所に行こうと思いましたが。ナオナビからお誘いが。
 「せっかくここまで来たんだから、室戸岬を見ていかないか」。
 逆方向に行くことになりますが、どうやらすぐ近く、5分とかからないみたいです。ならぜひ行きましょう。
 さきほどホイールカバーを転がした道を降り、元の道に戻ってそこを左折。あと道なりに、車通りの全くないと言っていいような道をひたすらまっすぐ。中岡慎太郎像(竜頭岬の坂本龍馬像と向かい合ってるという説。実際は東京を向いているとか)があるので、そこを目指しましょう。

 通り過ぎた。

 観光地だから、もっと広い駐車場ぐらいあるのかと思っていたら。民宿か、喫茶店か、ともかく(観光客狙いの)店が並んでいて、そこの駐車場を利用することになる。いや、逆に駐車場に店があるのかもしれないが。民宿の駐車場に停める。10分ぐらいのことだ、大目に見てくれ。まあ、ここに「勝手に停めるなー」と怒る店主はいないと信じたい。

 車を止めて、降りる。
 なんて分かりやすいカーブ。
 カーブの頂点に、我々はいます。岬だなあ。

 前方には岩礁が。いろんな物質を含んでいるだろう、いろんな色の岩がごろごろしています。壮観です。渚百選に選ばれているそうですが、うん、選ばれててもいいでしょう。ちなみに手元の地図には『乱礁が囲む台風銀座の岬』とあります。これは褒めてるんでしょうか?
 海岸に降りられるので、喜んで降りる。
 しかし江口はこれを想定していなかったので、サンダル履いてました。これで岩を登ることは非常に困難でありました。登ったけど。

 天気も良いので、老若男女、さまざまな観光客がいます。団体であったり、一人であったり。
 というか、かなり「一人で黄昏れ」ている人がいた。女性一人なんて、まったく失礼な話ではあるのだが、死にゃしないかとハラハラしてしまった。壮観なこの岬は、戻らない遠泳をするにももってこいのカンジがするし。岩のてっぺんに腰掛け、遠くを見る。優雅なんだか切羽詰まってるんだか。
 で、まあ岩場。引き潮だったのか、普段からこの程度なのかは分からないが、岩の上登り放題、磯溜まり浸かり放題。岩陰隠れ放題。
 この上なく下品な話をするのだが、きっとここは夜には、大自然に還った男と女のメッカなのではないかと思った。ごめん。

 木製の展望台があったので、遠慮無く登る。登るためには、売店の中を一旦くぐらなくては。そして展望台じたいも狭い。混雑時には避けたい雰囲気である。
 江口の感覚で言うと、展望台に登って眺めるより、浜に降りて岩に登った方が楽しかった。次はスニーカーを履いてこよう。
 ところで、こうした観光地なのに、派手な土産物店が見当たらない。こういう場所こそ、道の駅が出しゃばってきそうなのに、昔ながらの地味臭い喫茶店と民宿、そして展望台のあった売店は、売店という意味を放棄していた。なにか土産物を帰るでもなく(売ってはいたが、楽しく選ぶ雰囲気じゃない)。いや、もしかしたら道沿いのどこかに別にあったのかもしれないが、海岸の降り口に一番近いこの展望台付近、本当にタダの『海岸』であった。
 まあ、そういうスタンスを取るのが間違っているわけではないので、部外者の江口が言うのはここまで。

 では楽しい寄り道も終わり。引き返して、次なる目的地へ向かいましょう。

 車を出すのに難儀します。カーブの頂点、左右どちらの車線も見づらい。

 

 

●第二十五番札所 宝珠山 津照寺(ほうしゅざん しんしょうじ)●


週刊遍路も同じ構図。
こうとしか撮りようがない。

 再び55号線を西に向かいます。
 案内表示に従い、途中で脇道にそれて、狭い道を進みます。
 だんだん生活道路となり、商店街やスーパーマーケットや銀行といった生活臭がぷんぷんしはじめます。けれど、観光遍路人のすがたもちらほら。妙に路上駐車が多く、進むのに一苦労。あ、右手に寺が見えました。けど、駐車場はどこでしょう? 前方にでかでかと看板が。「突き当たり左 P(駐車場)」。駐車場って書いてるんだから、駐車場だろうよ。狭っくるしい道を、駐車場を求めて進むが、道に突き当たることはなく。せっかく見つけた津照寺から遠ざかっていきます。道を間違えたか、と思ったが引き返すこともできず、とにかくこの道を抜けようと進み、ようやく突き当たってから左に曲がってみる。

 どんづまりの船着き場。

 ごめん、まったく余所者が紛れ込んでしまったよ。ちょっと道を間違えただけなの、Uターンさせてね。

 引き返し、再び駐車場を探すが見当たらないので、しかたなく信用金庫の前が広いスペース空いていたのでそこに駐車する。すぐ帰ってくるから。ごめん。

 さて、なんとか津照寺に到着しましたが。
 狭ッ。そして細ッ。
 石段しかないの。横に伸びることを拒否し、上に積み重なった札所。吹き流しは何の意味があるんでしょうか。そして外観は中華料理屋の入り口のよう。というか絵本に出てくる竜宮城。と思って『週刊遍路』を見ると、「おとぎ話の竜宮城のよう」と書かれていた。ものは言いようってことか。すまん。
 かなり高い石段で、どんどん無言になります。
 登り切ったところは、高所の特典、良い眺め。海が見えます。気持ちいいです。でもそんなキレイな景色を喜ぶような余裕はありません。登ったところも狭いので、あまり寛ぐ間もなく降りました。路駐しているのも心配だしな、長居は控えよう。

 さて、家に戻ってから、我々は『週刊遍路』を確認しました。
 あ、あのどんづまりの船着き場、あそこに車を置いたんで正しかったんだ。
 そう、ここには駐車場がない。なんとかその港でスペースが取れたので、そこに置かせてもらえるようになってたんだ。
 しかし、もうここは路駐が暗黙の了解になってるんだろうな。本当は地元住民もイヤかもしれないが、そこら辺に停める遍路の1人1人捕まえて怒るわけにもいかないだろう。えー、江口はもう行かないので安心して下さい。

 

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