●2006年9月11日〜13日の旅●
特急ゆふいんの森殺人事件
江口は西村京太郎ミステリーが大好きである。 いったい何冊読んだやら、図書館に並んでいた本を片っ端から読んでいた。母の知人がどうしたわけか100冊を越える京太郎文庫を譲ってくれたこともあった。そりゃあもう、いろんな電車に出会ってきた。乗り換えに憧れた。寝台車に憧れた。個室に憧れた。 そして『ゆふいんの森』号に憧れた!!!
9月。夏の間一生懸命働いた江口に、やっと盆休みが貰えます。 せっかくだからと、4連休を貰いました。4連休もあるんだ、どっか旅行に行ってもバチはあたるまい。
行きたい旅行先はあるか? 湯布院しかございません!!!
そもそも4年ほど前、前の職場を辞める直前。有給休暇を使い切るための1ヶ月の休みがあった。この貴重な空白の1ヶ月。そりゃいろんなことをしたいでしょう。そのうちの一つが、ひとり旅。まだ実家暮らしで貯金もあったので、念願のひとり旅に行く計画を立てていた。 ママンに激怒された。 この時期、江口とママンは折り合いが悪く、ささいなことで衝突を繰り返しておりました。 江口の計画を話すと、やれ女のひとり旅は危険だとか、ひとりで旅をするなんてみっともないとか、旅行にお金を使うのが勿体ないとか。何だかんだと難癖を付けられ、非常に気分が悪くなったのでブチ切れて頓挫。 その半年後、江口は家を出て一人暮らしをしはじめました。こうなるとお互いに距離が出きて、仲も回復したのです。なんか関係ない話をしてるな。
ともあれ、江口にとって湯布院とは、憧れの地でもあり、恨みの詰まった地でもあるのです。 えーと、江口は楽しい話をしたいはずだったんだけどな。
そんな積もり積もった色々な感情がイイ具合に熟成したのでしょうか。 「湯布院に行きたいなあ」は「湯布院に行くぞ」に変化しました。 そうと決まれば、次は行動に移すのみです。 が、ここで大きな問題が。
江口、泊旅行の手配をしたことがありません。
これまでに行った泊旅行は、修学旅行(学校が手配)、友人の田舎(友人家にお泊まり)、去年の広島(友人が手配)、その他全て、他人が手配したものに乗っかるだけ。
えーと、旅館の手配と、切符の手配。どうやったらいいんですか? とりあえず、旅行代理店に行ってみた。パンフレット貰った。よく分からん。で、当然っちゃ当然だが、代理店に頼むとお金かかるんだよな。
結論。 自分で旅館に予約の電話を入れる。
あまりにもシンプルなこの結論であるが、旅行初心者にこの結論はなかなか気づけませんでした。そんな、個人で電話してもいいのかしらん、という恐れが。いいんだけどね。というか、よくない理由はどこにもないんだからさ。というわけで、由布院温泉観光協会のサイトと、まっぷるを片手に適当な旅館をピックアップ。 しかし、ここで予想していなかった問題が発生。
おおかたの旅館は、一人泊を受け入れしてません。
ビジネスホテルなら何も問題はなかったんでしょうが、江口の希望として、予算に糸目を付けず豪華なところに泊まりたかった。離れになっていて専用露天風呂なんかがあるのがサイコー、と。 一人では使わせて貰えませんでしたー!! みはーー!!
後にこの話を聞いた職場の同僚が「失礼な、一人で泊まったからって、変なこと考えてるわけじゃないのに」と江口の代わりに怒っていたが、別に自殺しなくても、二人泊められる部屋に一人しか入れないのは勿体ないという話であろう。なにせ大人気観光地、9月の平日だというのに大半の旅館が埋まってるほどだからな。 そう、なんとか一人泊可のところを見つけても、満室だからと数件断られた。すごいな、湯布院。 何かで聞いた話だが、温泉人気の下がってきた昨今、未だ活気があるのは湯布院と熱海だとか。その話の真実を肌で感じた瞬間。
そうしてやっと2泊分の旅館を確保。あとは往復の切符を。 これは何度もやったことがあります、自分で駅の窓口に行って購入。終わり。
旅行先の宿と、交通手段の手配。これで旅行の事前準備は完了でしょう。 いえ、もう一つ残っています。これはぜひやってみたいと思っていたこと。
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旅のしおりの作成ーー!! ええ、作りましたよ、旅行会社で配られるような、ベタな作りの旅のしおりをね! しかもわざわざ「楽しい旅を満喫」「おいしい料理に舌鼓」なんていうアオリ文まで入れてね! 何度も推敲してさ! ステキなイラストまで入れてみたよ!! 楽しーなあ! 旅の準備で一番楽しいなあ!!
さ、行こうか。
●特急ゆふいんの森号● http://www.jrkyushu.co.jp TOP>サイトマップ>『おすすめの旅情報』ゆふいん>リゾート特急でゆふいんへ
シート上部の荷物置き場をパチリ。 友人に「何の資料?」と聞かれた。
11時直前、観音寺駅から『特急しおかぜ12号』に。12時前には岡山駅に着くので、そこから『のぞみ13号』に。ホームで待っている間、ひかりレールスターの姿を見つけてしばしウットリ。車内で読書と、幕の内弁当で昼食を済ませる。のぞみに自由席があったことに驚く。のぞみだって楽しい新幹線、コーヒー飲んだりして旅気分を高めようと思ったが、後にある列車のために我慢。14時に博多駅着。いつ海峡渡ったのか気付かず。 そしていよいよ、念願の『ゆふいんの森5号』に。ああもう、緊張。 さっきから顔が笑ってんのな。何でだろ、そんなに嬉しいのか。嬉しいんだな。 乗り換え待ち時間は約40分。ちょっと長いな、ホームに休憩スペースがあったので、そこに座って読書の続きをしながら待つことに。
10分後。 ホームに入ってきたーー!!
まだ発車までだいぶ時間ありますよ? ああ、博多が終着駅で、折り返しで5号になるから、その間の清掃・整備のためにこんなに早く入るんだな。
おかげで写真、撮り放題!! 掃除の時間じゃないだろ、撮影のために乗客に与えた時間だろ。
前から後ろから、ホームをあっちこっち移動しては撮りまくる江口。正面を撮る、運転席を撮る、エンブレムを撮る。
ゆふいんレディだって撮る! あらゆるものを撮りまくる江口、と、その他の乗客達。 この時点で、このホームにいた人の大半はゆふ森(略)に乗るためにいたのだと判明。皆が一斉に緑色の列車にカメラを向ける。 江口だって負けない。デジカメで撮る、写るんですで撮る、自分でも撮る、シャッターを押して貰う。 そう、この頃になると平気で他人に「シャッター押して下さい〜」って言えるようになってた。なにせ周りは皆同類。代わりに撮ってくれと頼まれることも多数。 そしていざ車内に入っても、やっぱり中を撮る、車窓を撮る、洗面台を撮る、ビュッフェを撮る。
ゆふいんレディだって撮る!!
白状します。こんなに撮りまくってるのは何十人といた乗客の中で江口だけでした。気にしなーい。
さて、興奮を全く隠さず隠す気もなく乗り込んだ、憧れの、憧れのゆふ森ですが。
サイコー★
素晴らしいです。素敵すぎます、ゆふ森。 列車としては単なる特急(自由席無し)なのだが、『観光列車』として徹底している、その姿勢がステキです。レディ達は皆、遊園地のコンパニオンのようにものすごい笑顔でもてなしてくれて、車内は座り心地良く内装も凝っている。乗客だってほとんどが旅行客だからそれなりに盛り上がって、全員で一つのバスに乗って社員旅行にでも行っている感じだ。 なので逆に言えば、この列車を単なる特急列車として乗った場合、この騒々しさ、過剰なサービス、全てが苦痛となるでしょう。途中の駅で一般の親子が乗ろうとする場面を見たが、レディに出迎えられて困惑していた。
荷物を置き、写真もひととおり撮り、検札も済ませました。本格的にゆふ森を楽しむことにしましょう。
まずはビュッフェ!
乗った早々にビールを飲みに行くわし。 まだビュッフェだって準備中だ。他の乗客、誰も動いていないってのに。 そして頂きました、ゆふいん地ビール¥500。 この列車が3・4号車なら、サロンが付いているからそこで飲めたのだろうが、ここではカウンターバーがあるのみ。ここで飲んでもいいというが、何せ揺れる揺れる、そこに液体なんか置けるわけがない。置いたけどね、撮影のために。 結構揺れるのを見かねたレディが、隣の車両の空いていたボックス席を「飲んでいる間だけなら」と勧めてくれた。優しいなあ、レディ。こおゆう気遣いもまた嬉し。ビバゆふ森。
気が済んだのでようやく席に戻ります。
頻繁に車内販売のワゴンが回ってきます。乗客達は競って買い物をします。わしは一通り味わったので、大人しく座って西村京太郎を読み続けます。 改めて読んで気付いたが、この小説、そんなにゆふ森は紹介していない。しかもあんまり褒めてなかった。
電車はどんどん進みます。途中で車窓に滝が見える場所があり、そこになると速度を落としてじっくり見せてくれたりする演出もまたニクし。 しかし江口は、滝よりも「本場こんぴらうどん」の看板が見えたときに一番興奮してました。なんだかなあ。
さて。時間は3時ちょい。 なんだか小腹もすいてきましたね。 ここではビールも飲んだし、あんまり飲食するつもりはなかったんですが。
ゆふ森オリジナルブレンドのコーヒーがあるんですよ。
コーヒーを飲むなら、茶菓子が無くてはなるまい!
シートに置いてある、商品パンフレットを見ます。おお、ここには由布院で有名なPロールケーキも販売しているそうですが、時間が時間だけに売り切れ。なので他のものをチョイスします。マドレーヌがありました。チョコレート味と、りんご味。チョコレートを選択。再びビュッフェに行き、コーヒーとマドレーヌ、セットで¥550。
うまー。
Pロールがどれほどのものかは知らないけど、このマドレーヌだって十分おいしい。そしてコーヒー。ものすごくおいしい。所詮車内販売のものだとたいして期待していなかったんだけど、煎れっぱなし保温しっぱなしで香りが抜けきったコーヒーとはまるで違う、立派なコーヒー。
ここで、江口が旅の途中に記録していたメモ帳を見てみます。 至る所で『いいなあ、ゆふいんいいなあ!』と書いています。よほど嬉しかったのでしょう。 観光地によくある、期待はずれ感がまったくありません。行き届いたサービス、接客、全てが満足です。車掌もいい男。ケチの付けようがありません。 旅の興奮がプラスアルファされているとはいえ、これはうれしい電車でした。 出会えて良かったです、乗れて良かったですゆふ森。 また会いましょう。
って、帰りも乗るんですけどね。
最後はこんなふうに、日付入りタペストリーを持ち、車掌かゆふいんレディの帽子を被ったポーズの写真を撮らせて貰えます。 江口のチョイスはもちろん車掌帽子。
●由布市1日目●
ゆふいん駅到着。 デザイナーズステーション。
おお、憧れの地、ゆふいん!
電車に揺られること約5時間。とうとう、湯布院に到着致しました。 なんでしょう、この人の多さは。しかも明らかに、観光客。
普通の住民はいないんですか?
ともあれ、今日は観光の予定はありません。まっすぐ宿へ向かいましょう。 宿の位置はおおざっぱな地図しか知りませんが、まあ時間もあることですし、多少迷ってもいいや、散策しながら歩いていきましょう。
荷物、重っ!
江口、スポーツバッグに荷物詰めてたんだけど、周りの誰もこんな大荷物しょってないの。えー? みんな、宅急便で先送りってやつですか? 本気で、大荷物なのは江口1人。ちょっとかっこわるかった。 ちなみに、湯布院は観光地らしく、荷物預かりが充実している。また、旅館同士で荷物を送り合うサービスもある。なのでおおかたの旅行客はこれを利用しているのだろうが、それにしたって1人ぐらい大荷物がいてもいいんじゃないかなあ。ものすごく場違いでした。
旅館まで徒歩で約15分。 行くまでの道は両脇に土産物屋が並ぶメインストリート。 すごい人混みです。夕方5時近いというのに。まあ、まだ陽が高いから、べつだんおかしいことでもないのであるが。 賑わってるなあ、というのが正直な感想です。
というわけでやって参りました、初日のお宿は草庵秋桜です。
●草庵秋桜●
http://www.yufuin-kosumosu.jp/
街中に唐突にあります。
これは湯布院の旅館全てに共通することなんだけれど。 風情ある、老舗旅館という建物ではあるけれど、ロケーションは全て街中。山の奥とか、田んぼの真ん中とかではなく、土産物屋が林立する街中に唐突にある。 なので、『窓の外に広がる絶景』というものが存在しません。 露天風呂もあるけれど、周りは塀まみれ。もっと源泉に近い、山の方の旅館に行けば違うのかも知れないけれど。
ここ草庵秋桜も同じです。 多少のことは気にしないで参りましょう。 ではチェックインです。
きゃーーーー。
すてき旅館ーー。
こじんまりとした、江口好みの作りです。ほんのり薄暗く、建物の外は雑踏であるということを感じさせません。部屋に案内されるまではロビーで待機ですが、その間にお迎え菓子でもてなされます(この日はよもぎ大福)。レトロな雰囲気のロビーで、ふかふかのソファで、宿帳に記入しながら、のんびり待ちます。 しばらくして、従業員が案内に来ました。
跪かれました。
そりゃ座っている高さを考えたら、その姿勢をとるのが一番正しいのだろうが、いい歳のオッサンにひざまずかれるのはドキドキだ(同じ感想を、カーディーラーでも抱く。はい、小市民ですから自分)。荷物を運んでもらい、今夜の部屋へご案内。 そうして案内された部屋は、洋間でした。しょんぼり。 しかたないけどさ。1人で部屋を取れただけでもありがたいとしよう。
さて、さっそく荷解きをします。夕食は6時30分から、なのでそれまでの約1時間半が空きました。
オゥ、フロー!!
友人が言いました。「温泉に来たら、5回入浴が普通でしょう」。来館時に、夕食後に、寝る前に、起床後に、チェックアウト前に。
江口だって『普通』の人間ですから! そのへんに転がっている小市民ですから!! 5回入浴が普通なんでしょうよ! というわけで、さっそく浴衣を抱えて風呂場にゴーです。 ここのお風呂は、露天付き個室もありますが、メインは大浴場。屋内と、屋根続きで露天があります(周囲は塀。本当にコレを『露天』と呼んでいいのやら)。 同じ作りで、家族風呂が2カ所。狭いけれど、内側からカギをかけられます。予約制などはなく、「空いていたら使っていい」ということでした。 江口が浴場まで下りてきたとき、誰も利用していませんでした。だから家族風呂を占領しようかと思いましたが。 せっかくなので広い風呂の方がいいです。のんびり利用させて貰いました。 泉質? 知らん。
6時30分。夕食タイム。部屋ではなく、別に食事処(個室)があるので移動。一旦ロビーに全員集合、そこから各処へ案内される。 江口にも一部屋が与えられました。 座って、しばし待つ。秋桜模様の着物を着たレディ達が、順々に料理を運んできます。運んでくるたび、「料理と江口」の写真を撮って貰いました。
もちろん秋桜レディだって撮る!
「お一人での食事は寂しいでしょう」とか言われたが、まったくそんなことはありません。楽しんでます。楽しみまくっていますヨ。
では本日のお夕食メニュー。
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すくい豆腐・ 鮪山かけ・ 春菊のきのこ和え |
土瓶蒸し
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旬の造り
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秋茄子と穴子東寺蒸し
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鱒奉書焼
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お口直しのシャーベット
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米茄子グラタン
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鰻と名残り野菜焚き合せ
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豊後牛ステーキ・ 秋桜自家米・ 香の物盛り合せ |
栗プリン
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うわあん(嬉泣)。
あのね、あのね。江口ね、料亭でゴハンとか食べたこと無い子なの。 なんですか、この素敵なお夕食は。なんですか、この素敵なお夕食は。思わず2回言うよ。 もちろん、どれもこれも美味しゅうございます。舌バカの江口には勿体無うございますほどに。 何度か言ってますが、江口は偏食で、野菜をたいてい食べません。まあ、ここでは残すのもみっともないと思ってとりあえず箸はつけたのですが。 その江口が全部平らげました(香の物だけは勘弁してもらったが)。 幸せです。幸せです。ありがとう秋桜。ありがとう江口の盆休み。この宿選んで良かった。
難を言えば、食事の進行がものすごく遅いことか。2時間かかった。 もっとも、他の客達は、おしゃべりを楽しみ、酒を飲みつつ食べているだろうから、このくらいが丁度いいのかも知れないが。江口はなあ。
そうなんです、飲んでないんですよ。 なぜならこの後、もうひとっ風呂浴びて、バーに行く予定があったからな!
バー。 名前は『WITH・BAR』。 っても、この旅館自体が普通に料亭として解放されており、昼間の喫茶店フロアが夜にはバーになる、というそんなタイプのところ。 しかし、なかなかに本格的なところでありました。 旅館併設のバーだから、せいぜいサントリーのカクテルバーをコップに注ぎ直してから渡してくれるような場所だと思っていたんですが。 ちゃんとバーテンダーがいて、メニューにないカクテルを作ってくれるところでした。
ちなみに江口のオーダー。最初はメニューに載っていたブラッディマリーを(好きだな、江口もコレ)。2杯目はバーテンダーにオーダーしてみました。「柑橘系のカクテルを」。 出てきたものは。コアントロー+グレープフルーツ+レモン+ジンジャーエール=サマーバケーション。 ありがとうございました。
ほろ酔いで部屋に戻り、あとはぐうたらしてお休みなさい。 この時点でフィルムカメラ一つ使い潰してます。足りんな、このペースじゃ。
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