●第三十四番札所 本尾山 種間寺(もとおざん たねまじ)●
たっすいがは、いかん!
上の写真は何かといいますと、昼食に立ち寄った「豚太郎ラーメン」にあったものです。「たっすいが」って何でしょう。まったく意味の想像付かない単語であるので、いったい何だろうと、ラーメンが出てくるまでずっと議論していました。まあこのご時世、ググってみれば一発でわかるんだろうけどね。
我々、先ほどの桂浜を出て、海岸沿いの快走路を西に向かって走っていました。種間寺へは、この道を途中で北に曲がります。お昼ゴハンはまだ食べていません。この道には何もありません。ああ、豚太郎を通り過ぎました。どうしよう、しばらく店はなさそうだし、Uターンしようか、どうしようか、と話していると、車は川にかかる橋を通りました。
真人間「あれ? いま、川渡った?」 江口「渡ったよ」 真人間「行きすぎたーーー!!」
仁淀川大橋を渡っては行きすぎです。なのでUターンせざるを得なくなりました、と。というわけで昼ご飯はさっきの豚太郎。 このあたりから真人間ナビはうまく作動しなくなってきます。何故でしょう。なぜならさっき真人間をやめたから。これからの彼はただの人間ナビ。性能ダウン。
あんまり言うと怒られるのでフォローしておきますが。 えっとね、高知のこのへん、道が分かりにくいです。桂浜があるとはいえ、ここは単なる海ッぱた。港もない、単なる海岸線の現状ってこんなもんです。道路公団は無意味な道路を作りすぎだとか言う批判もありますが、車がらくらく通れる道路がない地方ってのはいくらでもあります。あんまり言うと今度は高知人に怒られそうだな。そしてもっというなら人間ナビは元々高知が本家の人間だからな、ダブルでダメか。
とにかく、桂浜までの表示は余るほどあるのに、それ以外の表示が全くありません。竹林寺のときあたりでも言いましたが、高知はお遍路に優しくありません。 ただでさえ札所は、そんなに交通の便のいいところにはない(自動車なんか無い時代にできたもんな)。車を運転する方なら分かると思いますが、路地は運転席から見えづらいものです。走っていて、路肩に隙間が見える、それは車が入っていい道なのかどうか、気が付いたときには通り過ぎている。 何が言いたいかというと。
曲がれそうなスペースがあったら、とにかく曲がってみよう!
「えっ、ここ、道なん?」と思うところが、たいてい道です。そのくらいの心づもりで行った方が間違いないかもしれません。 それでもし他人ちの庭に入り込んだら、その時は謝って引き返そう。
なんだかんだで、かなり迷いながら行った気がする。 今、手元で地図を広げて通った場所を再確認しているが。県道14号を仁淀川から東へ引き返し、途中で左折(北方向)したつもりで、春野中学校の前の道通ったもんな。春野中学校の脇の道から、役場前を通って、ようやく目的地到着です。
ではお待たせしました、種間寺でございます。
田んぼの真ん中にある、オープンな雰囲気の寺です。あまりにオープンすぎて、本堂の中、お守りやら数珠やら置いてあるセルフ売店(と言っていいのか、とにかく販売所)は、お金がムキダシで置かれていました。仏教って性善説なのかなあと考えたりした。いやほんと、田舎の無人みかん販売所レベルで無防備です。 安産祈願の寺で、大きな子育観音があります。江口らが行ったときにはあんまりお供えや奉納品はなかったが、ガイドの写真を見るといろんなものが供えられています。時期の問題でしょうな。 そして、ここは安産・子育観音。 もうひとつお堂があって、そこにも観音像が。 そして壁一面に、小さな地蔵がびっしりとーー。一瞬、ロウソクかと思ったぐらい小さくて、そしてロウソク立てのようなスペースがまだ空けられています。 不謹慎極まりないのは重々承知だが、「怖ッ」というのが正直な感想でした。江口だって人間だ。
御朱印をいただきに参りましょう。 そういえば10番札所からこっち、この納経帳について寺の人になにか言われることはなくなったなあ、やっぱりにわか遍路は10番以降は進まないのか、高知の遍路人口は少ないのか、だから案内板がないのか、などと考えていたら。 久しぶりに言われました。 講談社の納経帳は、紙の質が悪いとね。ええもう、使っている本人が一番よく分かっております。
無事に墨も乾きました。次の札所へゴー。
さて、我々は今から清滝寺へ向かうのですが、まず役場前まで戻って、ちょっと広めの道を選択しながら国道56号へ向かいましょう、と。その結果選んだルートは県道36号。ほう、川沿いの道ですな。いえいえ、川じゃなくて、用水路。路肩にえらくあじさいが多いですね。とか思いながら進むと、『あじさい街道』の看板が。ああ、なるほど、そういう目的を持って意識的に整備された道なのですね。 しかしいかんせん、今は8月、とうにあじさいの季節は終わってしまいました。未練たらしく茎にしがみついている花をひとつだけ見つけました。 改めてみると、確かに気合いの入ったあじさいの数です。用水路の上には欄干のない橋(沈下橋みたいな。ただの渡り板といった方が正しいかもしれんが)があり、きっとここにみんな集まってあじさいを見るんでしょうな、夏には子供が川に入って遊ぶよな、でも実際観光客が来ると、この狭い道は大渋滞でいい迷惑なんだろうな、などとテキトーな話題にしながら通過。 後で週刊遍路の写真見たら。
うわああーーー。すごおおいいいーーー。
これはぜひ、シーズンに一度見てみたいものである。
●第三十五番札所 医王山 清滝寺(いおうざん きよたきじ)●
巨人が。
56号線を土佐I.C.方面に向かってどんどん走ります。 走ります。 走ります。
‥‥やっぱり目印がありません!! えーと、どう行きゃいいんだ? とにかく、曲がれそうな道があったら曲がるんだな。それから、高速道路の高架を、くぐって、くぐったら、行きすぎとるやないけ! おーい、人間ナビー。がんばってくれ人間ナビー。それにしてもこの人間ナビも、遍路旅を始めてから「Uターンする」ことに抵抗が無くなってきたのでたいへんに精神衛生上良し。昔はUターンは負けだと言って許して貰えなかったからなー。 ともあれ、行きすぎたのを引き返して、高架と交わるように道があったのでそこで北西方向へ。 ああ、やっと『清滝寺』の案内も見えました。 そして民家の塀などに、雑木林に紛れ込む板きれ看板に、至る所に『清滝寺』の文字があります。
いやなパターンですな。 こうして細かく指示をしないとたどり着けないというパターンですな。 案の定、車はどんどん山の中へ入ります。 道幅は細く、急な山道を進みます。 焼山寺や太龍寺の時に体験した、辛く厳しい山道がここで再びです。 そうして泣きながら進み、ついに到着した我らの目に飛び込んできたものは。
清瀧寺へご到着です おつかれさまでした
小馬鹿にされた気分です。 いえ、分かってますよ。これは好意のことです。好意をこんなふうに受け取る江口の方がひねくれているのは重々承知しておりますよ。でもなあ、分かってくれよ。辛く厳しい道を抜けた先に(って車なんだけどね)これを見せられちゃ、なんとなく萎えますよ、いろんなものが。
そして後で気付いたが、どうやら江口は降り口の方から登ってきたらしい。ま、一方通行の指定もないものでどっちが降り口で登り口か、なんて決まってはないんだろうが。イキナリ境内に車ごとつっこんでしまいました。駐車場はここより下、石段を下りたところにあるらしい。それには気付けなかったので、とりあえず境内の中の、テキトーなスペースに停めることにする。結果、車のまま参道を横切ってしまう形に。まったくもってバチ当たりな我々でございます。ごめん。
ちなみに車を止めたのは、境内の中にある消防団分所のそばで、消防車のある隣に。 こんな風に消防車に「御納経所」ってあるので、てっきりここが納経所かと思った。本当。
ところでこの周辺は、どうもパラグライダーで有名なところらしい。らしい。未確認情報で申し訳ない。まあ、けっこうな高度を登ったと思うしな。 つまりここは、けっこう賑やかなポイントと考えてもいいらしい。そして寺曰く、これでも道路は整備されて往来がしやすくなっているという。 『道路の恩恵に預かった人は感謝の気持ちを』とかなんとかで、寄付を求める箱が置いてあった。 そうか、あの道でも十分、整備された道という扱いなんだな。いったい舗装される前はどんな難所だったんだ、ココは。焼山、鶴林、太龍の遍路ころがしなんてまだまだ甘いんじゃないかなあ(もっとも、あそこで引き返すような半可遍路はここまで来ないだろうから気付かないんだろうけどね)。
さて、駐車した場所が場所です、長居もしていられません。早く終わらせて、早く出て行きましょう。 この辺りから、タクシー遍路をしている一団と同じタイミングで行き来するようになる。 なんとなーく競争心が芽生えるのは人間としてしかたのないことで。
ああ、さっきまで自分たちの先々を行かれていたタクシーを、今度こそ追い抜きました。今度こそ、タクシーよりも先に次の目的地へ行ってやるー。
‥‥ごめん。向こうの方が道に詳しい。 信号待ちをしている間に、前の交差する道を横切られたときにゃ、ああもう。
●第三十六番札所 独鈷山 青龍寺(どっこざん しょうりゅうじ)●
性善説。
それではいよいよ、本日最後の札所でございます。 場所は、これまでの道を引き返すように走り、湾の向こうにある青龍寺です。 交差点で信号待ちをしていると、さきほどのタクシーが目の前の道を悠々と通り過ぎていました、ああ、やっぱり向こうの方が道を知っている。あとから追いかけるように、国道56号に戻り、そして39号を目指します。39号にぶつかったら、そこを右折ね。おっと、信号のある交差点、標識には39号の文字。じゃあ曲がりましょう。
‥‥違うがなー!!
国道56号に、39号は二つくっついています。てゆうか改めてみたら、39号があっちゃこっちゃに。 えらく鋭角に右折する交差点だったら、それは間違いです。サニーマートを越えてから、やっと右折を許されます。 途中で間違いに気付き、Uターンして、本来の39号へ。あとは一本道です、ひたすら進み、途中でT字路にぶつかります、それを右折。海沿いの道を行くとすぐに左に宇佐大橋という、新しい橋が見えるので、それに乗って湾の向かい側へゴー。
まあ、なんて言う名の湾なのかはしらないが、この宇佐大橋がなかったら、きっととんでもなく大回りのルートを取らされたに違いない。見事なショートカット。この対岸に渡ってしまえば、あとは道も良く、海の風に当たりながら、青龍寺まであっという間。
相変わらず、山の中の寺です。駐車場があるのでそこへ停める。
料金箱が‥‥。
無人の有料駐車場です。上の写真のように、ただ木箱だけがありました。こんなん、勝手に停め放題じゃねーのかよ。ああ、寺というのは人の善意を全面的に信じているのだなあと思い知らされた瞬間でございました。真意は分からんけどね。
さて、肝心の寺でございます。 寺と言えば石段。札所といえば石段。 ここでも、他所に勝るとも劣らない、ご立派な石段がそびえております。
石段に果敢に挑む人間。
果敢に挑む。
敗北する。
真人間を止めたら体力も無くなりました。彼ももうすぐ厄年です。 なんとか頂上まで登りました。上は、やっぱり小綺麗に整備された、山の上の札所然としていました。さすがに時間も時間、あまり他の参拝者はなかったけど、外国人遍路を見た。遍路と言うよりも登山者のような格好でしたけれど。 ふと脇を見ると、先の石段じゃない、別の通路がありました。整備された石段じゃなくて、獣道に足場を作ったようなもの。せっかくなので帰りはそこを歩いてみる。木々に触れ合いながら、なかなか風情のあるルートでございます。
以上をもちまして、本日の遍路道はすべて終了です、お疲れさまでした。
‥‥‥‥。
終わりですか?
本当に終わりですか?
はりまや橋を見ないで、終わるんですか??
ええ、まだ最大の目的地、はりまや橋を見ていないではないですか!! 往路で虚しく通り過ぎてしまった、あのはりまや橋を!! 今度こそ、ルートを再確認してチャレンジです。この道で合ってますか? 駅方面へ向かって車を走らせます。このまま順調にいくと、左手に見えてくるはずです。 ああ、あちこちに再び、『はりまや橋』の標識が出始めました。 まもなくです。まもなくです。信号があと、ひとつ‥‥ふたつ‥‥。
「見えたーー!!」
通り過ぎたーー!!
なにせこちらは運転している身、しかも場所は交通量の多い交差点のど真ん中。ちらっと横を見るのが限界でした。人間ナビはしっかり見たようですが。わしの代わりに見ておいてくれ。 とりあえず、欄干っぽいものと人だかりがあったのは分かった。なのであそこがはりまや橋で間違いないのだろうが、もしかしてバス停とか土産物屋の看板とかと見間違えていたらどうしよう。まあいい、思い出とはそんなささやかなことを膨らませて美しくなっていくんだ。 気が済んだので、アイスクリームを食べて乳酸値を下げ、安全運転で帰りましょう。
そして相変わらずガストでゴハンを食べ、お茶菓子を仕込んで江口宅へ。そして本日の反省会。
本日の戦利品。桂浜で見つけた、ご当地ピンバッチ。鳴門海峡と松山城です。 そして覚えてらっしゃいますでしょうか。江口、去年に広島へ行き、そこでもご当地ピンバッチを入手しました。
えっとね、これね、通勤バッグなのね。 お好み焼きと、もみじ饅頭。 余談であるが、このあと更に増えて、四国ご当地と神戸ご当地が数種類、ここに付けられている。
※11月9日、最後のはりまや橋再チャレンジのことを書き忘れていたのをようやく気付いて追記。
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