えぐちず 2

えぐちず 2 TOPへ メニューページへ


←前のページへ (20)鶴林寺 (21)太龍寺 →次のページへ

●第二十番札所 霊鷲山 鶴林寺(りょうじゅざん かくりんじ)●

狛鶴狛鶴
狛鶴あ 狛鶴うん(勝手に命名)。

 一に焼山、二にお鶴、三・四がなくて五に太龍。いや、正しくは三で太龍なんだが。だって日本人としてやっぱり七五のリズムは必要でしょう。

 遍路ころがし道に入ります。

 遍路ころがしとは。いわゆる難所。以前に焼山寺でも体験しましたが、山奥で道が悪く、前後の札所と極端に離れている箇所を指します。お大師さんももうちょっと考えてくれと言ったらバチがあたるか。
 立江寺の無料駐車場まで来たルートを逆送、立江郵便局手前まで戻りました。先ほど見えた真っ赤な欄干を通ります。
 すぐに県道28号線と『鶴林寺』の表示が見えますので、それに従って左折。道は狭いです。狭いクセに交通量は多い。運送トラックとかごんごん走る。いちおう、幹線道のようだ。
 前方を、奈良県ナンバーの車が走っています。ご年配夫婦のようです。若い奴らじゃまず乗らないだろう立派な乗用車です。

 さては同じ目的地だな。

 付いていくことに決めました。
 28号から22号線との交差点で右折(というか合流)、ローソンが見えるT字路までまっすぐ行きます(前方は川)。
 奈良車はローソンで左折、16号に乗りました。江口達も負けじと左折。
 すぐ先で、道路工事中。交互通行なのでしばし待つ。

 と、その間。前方を走っていた奈良車、その待機中に突然方向転換。今来た道を逆送していってしまいました。
 えー? 同じ目的地違うかったん? まあいい、それはいいとして、こんな工事待ちの間にUターンするとは。いったいどんな事情だ。

 旅の仲間を失い(実は鶴林寺で挨拶のひとつも交わすつもりでいた)、寂しく16号を進みます。

 間もなく標識が。
 標識には変な道の形があります。
 道路が、半円を描いています。
 漏斗を寝かせたような形です。

 その漏斗に入って瓶に注がれる醤油のように、我々の車は左折、険しい山を真正面に迎えます。

 山道に入りました。
 道路がアスファルトで舗装されていません。コンクリートです。ここは本当に公道なのでしょうか、誰かんちの田んぼのあぜ道走っているようです。対向車に耕耘機がいても驚きません、そんな道を上ります。

 まあしかし。山道とはいえ、焼山寺ほどエグくありません。対向車が来ても除けられるような、余裕のある道です。少なくとも端に寄ったときに谷底には落ちない。てゆうか対向車来ない。静かな山道をひたすらまっすぐ走ります。こういう場所でも、ちゃんと地元保存会の看板があるので助かります。1箇所、道が大きく二股に分かれているところがあって、そこで一旦悩んだ。その場合は右ですからね。まっすぐ行ったら次の札所行っちゃうよ。

 車は寺直前まで着けられます、ちゃんと駐車場もあります。ちょっと歩くけどね。
 山門には仁王像があります。

 もちろん、その仁王像も鶴。

 それをくぐり歩くと、今度は石段が。目の回るような高さの石段です。でもその上はもう本堂ですので、がんばって歩きましょう。
 上まで登り切ると、ツアー客でごったがえしていました。
 また隅っこの方で参拝。納経所が混んでいるので、その間に寺中の鶴を捜して歩く。
 ツアー客はいなくなりました。では納経へ。

 駐車場代¥300徴収。ぎゃふん。

 でも交通安全のおまもりシールもらった。鶴の絵が描いてある。
 「こういうキャラクターがあると寺も便利だね」と言ったらバチが(2回目)

で、性懲りもなくまた他人の祈願を面白がる江口。
だってこの装飾は強引でしょう。

渚の‥‥人形

 

 

 

 

●第二十一番札所 舎心山 太龍寺(しゃしんざん たいりゅうじ)●

ロープウェイ乗り場
太龍寺ロープウェイ乗り場(本堂側より撮影)

 現在時刻は午後3時すぎ。ねぼすけが尋ねました。「太龍寺は今日中に行ってしまうのか?」。
 やはり行っておきたいでしょう。我々は香川県から出発、ここまで来るのに半日かかっています。次もまたここから始めるにしても、スタート地点に来るだけで一苦労です。鶴林寺から太龍寺までは車で約30分。

 しかし問題が。

 ロープウェイを使うか、車で乗り付けて駐車場から歩くのかで時間がかなり違うのですよ。

 真の遍路ころがしです。

 ロープウェイを使えば往復一人2400円。駐車場から本堂まで歩くなら道のりは約1キロ。使うも苦行。使わぬも苦行。

 我々は決断を迫られています。
 しかし、考える余地もないほど、我々は貧乏でした。
 いやさ、せっかくこういう機会に、その遍路ころがしを体験しないとはどういうことよ。
 すんません、負け惜しみです。でも面白がっているのは本当。

 結論が出ました。まず4時までには駐車場に着いておこう、そこからは若さに任せてとにかく歩こう。5時までに納経さえ済ませれば、中を見て回るのはあとからでも良し。それで到着しなかったら諦めよう。人間、諦めも肝心。

 では鶴林寺を出発。さきほど間違えかけた二股の道まで行き、右方向へ。途中に犬がいてびっくりした。民家も何もない道で。捨て犬か、野良犬か。あと、途中でニワトリもいてびっくりした。民家も何もない道で。捨てニワトリか、野良ニワトリか。
 道に沿って山道を降りると、川にぶつかり道はT字に分かれます。正面の川は那賀川。江口達がここを通った数日後、アザラシが出現して「ナカちゃん」と早くも名付けられていた。
 この道を、右に曲がればロープウェイ乗り口方面へ。左に曲がれば、登山方面へ。
 もう一度、決断を。
 我々は左に曲がるのでよろしいのですね?

 はい!

 そして川沿いの道をすすみます。ちなみにこのへんの集落の名前は『十八女』。ねぼすけに「『じゅうはちおんな』って書いて何て読む?」と聞かれたので「お○こ(関西弁)」と答えたら、顔が後ろ向くまで殴られました。そんなねぼすけだって「させこ」って読んだくせに。正解は「さかり」。この辺に住んでる人に怒られるな。黙っておこう。
 川を渡り、岩を割るように生えている松の木に驚きながら先へ進む。相変わらず標識はちゃんと太龍寺を示しているので安心して走っているが、どんどん道が険しくなる。
 そして再び、エグい山道です。恐ろしい道です。いえ、単に勾配がきつくて細い道であるなら、これほど怯えたりはしなかったでしょう。
 何よりも恐怖だったのが。
 道に轍がないこと。
 うっすらとは残っている、しかしその上にびっちり生える苔。つまり、この道はほとんど車の通行がないのでしょう。本当に通っていいのですか? もしかしたら我々は、間違った選択をしてしまったのではないですか?
 道を進むと、二股に分かれます。一方通行で、右側が入(昇り)口。左は出(降り)口。つまりこの先、車がすれ違うことが不可能な道なのだな。
 後続車もいないのでゆっくり走れば大丈夫です。
 時間は丁度4時。
 誰もいない駐車場に到着しました。

 誰もいません。駐車場停め放題。小屋があるが、無人。普段が有人なのかどうかは不明。ただ水道の蛇口があけっぱなしにはなっていた。締めちゃダメだそうです。

 ではいよいよ、登りましょう。

1000メートル
寺まで1,000メートル

 普段、まったく運動不足の現代っ子ふたり。果たして1qの道を1時間以内に登りきれるでしょうか?
 上記のような立て札が200メートル置きにあります。カウントダウンが出来るので、すこしだけ励みになります。
 そうして進んでいくと、時々歩きの本気お遍路さんに出会います。すれ違いざま挨拶のひとつも交わすのですが、むこうは白装束の正装、こちとらジーンズにTシャツに普段履きスニーカー。場違いですか? わしら、場違いですか?
 2.3組すれ違いもしたが、全員本気組。わしらのような格好をした人は誰もいませんでした。何も悪いコトしていないんだけど、とても申し訳ない気持でいっぱいになります。ゴメンナサイ。

 ねぼすけはみるみるペースダウン。江口は若いのでスキップ踏み踏み昇り続けます。
 昇り初めて400メートル地点。ついにねぼすけ、ダウン。

800メートル
ジョーのように真っ白に燃え尽きるねぼすけ。

 ねぼすけの倒れたこの地点、やはり誰もが一息つきたくなる場所なのか、ベンチが置いてあります。そしてここは分かれ道でもあり、22番平等寺へ向かう立て札があります。
 ねぼすけが動きそうにないので、このまま放っていこうかと思ったが、ここまできて頂上を見ずに帰るわけにはいかない、と、ねぼすけ、再び奮起。

 しばらく歩くと、石段と山門が見えてきました。

山門

 ああ、ようやっとゴールか。辛い道のりであった。
 ‥‥と思ったら。
 ここはまだ半分。本堂への入り口じゃないんです。まだ続きがあるんです。騙された。

天を仰ぐ
騙されたと知って、天を仰ぎ悲しむねぼすけ。

 写真はヤラセです。
 この山門、中には健脚祈願の草履がたくさん奉納されています。大丈夫、ここへ来れた時点でもう健脚は保証されたようなものですから。
 そうして歩くこと30分。
 ついに我々は頂上へ到着したのです!

 到着したとたん動かなくなるねぼすけ。今度こそ本気でダメか。

 ねぼすけを今度こそ放っておいて、一人で境内散策をする江口。頂上には人がたくさんいます。皆さん、普段着でうろうろしています。そう、やつらはロープウェイ組です。ちくしょう、金持ちめ。
 焼山寺のとき同様、ここも手入れが施された綺麗な寺です。きっとロープウェイで物資が運びやすくなったんでしょうな。物資ついでに自動販売機のひとつもあればいいのに。我々の渇いた喉が潤いません。いえ、きっとロープウェイ乗り口へ行けばあったのかもしれませんが、そこへ行くにはまた階段が。気力がありません。

 ねぼすけが復活したので、一通りの参拝をすませる。せっかくなのでおみくじもひく。今年はあと2ヶ月しかないけど。結果は小吉。旅立ちは吉。ここは旅先。
 そして納経。なんでかそこに厄除けの案内が貼ってあって、江口が現在前厄であることを知らされた。厄落としか、どうしようかな。
 納経所のとなりにある持仏堂にあるという、天井の竜の絵をながめつつ、帰路につく。下り道は早い。下りルート至る所に「こちらにはロープウェイ乗り場はありません。引き返せ」という看板が。間違える人が多いのかどうなのか。
 と、帰り道を半分も下ったところで思い出した。

 あれ? 駐車場料金、請求されてないや。

 どうやら駐車場横の小屋は普段有人で、そこで回収しているが今日は休みなので納経所で支払え、ということであったのだが。
 江口も厄年でぼーっとしていたし、まさかおじゅっさんもこんな普段着二人が山歩きをしていたとは思わなかったのだろう、駐車場料金¥500を払わずに降りてきてしまいました。引き返すのもアレな距離です。どうしましょう、そのへんの小仏の前にある賽銭箱に入れておきましょうか、と提案したら、ねぼすけ、こういう場所での賽銭がちゃんと寺に行くかどうかあやしい、と。
 なので結論。
 世界平和に使うことにしましょう。

¥500を

帰り道のローソンで、パキスタン北部地震の義援金募金箱に入れてきました。これでこらえてください。

 コンビニでアイスも食べたことだし。ではおうちに帰りましょう。
 この時点で時間は5時。
 われわれは阿南市にいます。
 えーと。帰りの時間のこと考えてなかったなあ。思えば遠くへ来たもんだ、とな。
 考えても埒があかない。頑張って帰りましょう。
 あたりはみるみる暗くなります。江口の疲労もピーク。 どの道通って帰ったのかも覚えてない。とりあえずまた那賀川まで戻って、そこからたぶん県道19号を通って国道55号まで戻り、あとは来たときと同じ道を通って帰った気が。あってる?
 晩ゴハンは吉野川市あたりのバーミヤン。ゴハンを食べたら元気になる自分がちょっとアレ。
 そして家に帰り着いたのは夜9時30分を回っていました。

 帰ったらとにかく緑茶を煎れてしまう江口。何でだろうな。

 以上をもちまして、リベンジの旅・終了でございます。長らくのおつきあいありがとうございます。
 次の予定は12月。22番−23番をクリアし、今年の旅を終了させようと思っています。これ以上はたぶん雪で進めない。12月ってのもギリギリかな。
 では。

 

●↑このページのトップへ● ●→次のページへ● ●次を飛ばして本来の遍路リポートへ●


えぐちず2

『えぐちず2』は、『江口梨奈のすてきページ』のいちコンテンツです。

江口梨奈のすてきページ

すてきうさぎ